しがない大学職員が、子育てマスターとMBAの二兎を追う

大学事情や子育て記録、MBA取得のための学習報告等をしていきたいと思います。

【大学職員】なぜ大学は特許を保有することになったのか?パート2

どーも、コボです。
しがない小さな私立大学の事務職員です。

 

今日は、企業が保有するように大学でも特許を保有するようになった歴史的背景について、書きたいと思います。

 

まず、多くの方は、大学も特許って持ってるの?という疑問のところからかと思います。
大学は研究機関としての社会的な存在でもあるため、当然、発明は日々の研究内で生じていますし、その発明を権利として保有しようとすることは、企業と同様に行っています

 

さて、時は遡り、1990年代、バブル崩壊による大不況が日本を襲っていました。
この未曽有の大不況を打破すべく、知的財産を活用し日本の国際競争力を復活させるために日本政府が打ち出した政策が「知的財産立国宣言」です。
「知的財産立国宣言」では、知的財産権の創造分野の担い手として大学を始めとする研究機関が注目されました。自ら新技術を創造し、商品やサービスの付加価値を高めることができるフロントランナーとして国際競争力を持つためには、多くの研究リソースをかかえ、基礎的でありながら最先端の研究を行っている大学等にイノベーションの源流を期待したからです。

 

余談ですが、大不況以前からも研究者たちは当然日々の研究の中で発明となる行為を行っていました。
しかし、基本的には特許出願などの権利化するための手続きはせずに、すぐに学会発表や論文投稿、悪質な場合は、関係企業に発明に係る権利を奪われるといった事例もあったようです(金銭的なやりとりがあったかどうかはケースバイケースでしょう)。

 

2002年には「知的財産基本法」が制定され、大学等が知的財産の創造や保護、活用を行うことは責務であり、国の持続的な発展の源泉であることが示されました。
そして、知的財産基本法の精神を源流に、2006年に公布以来60年ぶりとなる改正がなされた教育基本法において、大学の使命として「教育」「研究」に加え、新たに「社会貢献」が明示されました。

 

以上のように、「知的財産立国宣言」を皮切りとして大学は知的財産を生み出すだけでなく、保有することになりました。

 

今では、大学と企業の間で共同研究等をする際も、きちんと契約書を締結するようになり、その内容には知的財産権をどのように取り扱うか、についても記載されることが通例となりました。


またも余談ですが、ドラマ・ガリレオのように(あれは警察ですが)知らない人が勝手に研究室を出入りし、契約もなしに知識・技術を他で応用する、というのは過去の話となりました(そう信じたいという願いも込めて)。

 

というわけで、今日はこのへんで。

どーも、ありがとうございましたー。

 

(参考資料(PDF)):
特許庁・(一社)発明推進協会アジア太平洋工業所有権センター、2016「大学における知的財産マネジメント」https://www.google.com/url?sa=i&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&cad=rja&uact=8&ved=0CAQQw7AJahcKEwjIo7Xdtr78AhUAAAAAHQAAAAAQAw&url=https%3A%2F%2Fwww.jpo.go.jp%2Fnews%2Fkokusai%2Fdeveloping%2Ftraining%2Ftextbook%2Fdocument%2Findex%2F64_Intellectual_Property_j.pdf&psig=AOvVaw2Ae1Z750Tb-Wu4N1W4oycb&ust=1673489067967058
佐田洋一郎、2008『知財ぷりずむ』2008年7月号、財団法人経済産業調査会知的財産情報センターhttps://www.google.com/url?sa=i&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&cad=rja&uact=8&ved=0CAQQw7AJahcKEwiIz-jTub78AhUAAAAAHQAAAAAQAw&url=https%3A%2F%2Fwww.mext.go.jp%2Fa_menu%2Fshinkou%2Fsangaku%2F__icsFiles%2Fafieldfile%2F2014%2F11%2F05%2F1257585_2.pdf&psig=AOvVaw08gaMIr06lmULmu-Qsrl2E&ust=1673489844520720
佐藤辰彦、2007「知的財産立国宣言」の背景と経緯―特許制度を中心として―」『パテント』日本弁理士会https://www.google.com/url?sa=i&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&cad=rja&uact=8&ved=0CAQQw7AJahcKEwiwhffbur78AhUAAAAAHQAAAAAQAw&url=https%3A%2F%2Fsystem.jpaa.or.jp%2Fpatents_files_old%2F200711%2Fjpaapatent200711_074-086.pdf&psig=AOvVaw0L9fU1XjvJmQTZXOWSopXI&ust=1673490138681189