しがない大学職員が、子育てマスターとMBAの二兎を追う

大学事情や子育て記録、MBA取得のための学習報告等をしていきたいと思います。

【大学職員】なぜ大学は特許を保有することになったのか?パート1

どーも、コボです。
しがない小さな私立大学の事務職員です。

 

今日は、今の私の仕事の内容と絡めて、知的財産権について、大学職員の目線で書きたいと思います。

今回のパート1は私の主観、次回パート2は引用を用いながら歴史的な部分を書きたいと思っていますので、是非どちらも読んでいただけると嬉しいです。

 

まず、知的財産権とは、特許権実用新案権、育成者権、意匠権著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利のことを総称して言います。
それぞれの権利に細かく、それぞれの国で法律が定められています。

 

私の所属するしがない私立大学では主に特許権の管理を行っています。
(余談ですが、教授や准教授が書く論文や学会での発表内容は、著作物(著作権)として扱われますが、著作権は原則的に著作者本人に帰属するため、大学の管理になることは、少なくとも私の大学はありません。)

特許権は、発明をした「発明者」権利を持つ「権利者」に分けて、特許庁へ出願して権利化をする流れとなるため、発明者は教授(准教授)ですが、権利者は大学になることが多いと思います。
これを法人帰属といいます。


ただし、一般的な企業と異なり、事業(営利活動)が主たる業務ではない大学ですので、発明者が発明したから=(イコール)大学の法人帰属、というわけではありません
企業では、事業方針にそった研究開発が行われるため、そこで生まれた発明は職務発明とされることが一般的です。

【イメージ】
<企業>社長命令⇒商品開発⇒研究者が発明⇒会社のもの
<大学>学長命令で研究しているわけではない(研究の自由)⇒大学の施設を使って先生が発明⇒誰のもの??

そのため、大学では、基本的に発明者からの発明の届出があり、理事等の経営者層を交え協議し、大学のものにするかどうかを判断する、というプロセスがあります。

このプロセスが、企業と大学では取扱いが異なる点です。

 

また、企業は自社の商品開発のために、特許権を取得して独占販売ができますが、大学はそもそも自社開発で商品を作らない・売らない組織(不実施機関といいます。)です。

ここで疑問を持たれた方もいると思います。
「じゃあ、何でわざわざ大学も特許を保有しているの?」、「特許出願にはお金もかかるし、自分が独占して商品作らないなら持ってる意味ないじゃん!?」これは普通の感覚だと思います。

 

それでは、仮に、教授(准教授)が特許権を取らずに、学会発表したとしましょう。
その研究成果が非常に優秀だけど、マネしやすいものだったら?
⇒その情報をマネしてどこかの企業が商品化して自分のものにしてしまったら?
⇒それだけでなく、そのマネした企業が特許も取ってしまって、その特許が原因で、回りまわって教授(准教授)の研究がこれ以上続けられないようになってしまったら?
⇒『THE END』です。

 

つまり、上記のようなケースを避けるため、大学がお金を出して特許を保有することは、教授・准教授にとってメリットがあるのです。
また、その特許を使いたい、という企業が現れた場合は、その企業から研究費を追加でもらえるかもしれませんし、人(企業)に貸すことで大学も収入を得ることができる可能性があります。

 

以上のことから、大学も権利を保有するようになったのです。

 

でもね、、、実際はそんなに甘い世界ではないのですよ。。。

 

特許は出願時点で、弁理士さんに関わってもらいながら出願手続きを行い、その後、審査の課程で起こる対応費、権利化したあとの維持費、etc。。。1件当たり100万円前後はかかるのが通例です。
大学の場合、苦労して取得した特許を自社商品にはできないので、費用を回収できるものは極わずか。
ほとんどの大学は、収入より支出が多いのが現状です。

 

また、特許権は基本的に各国で主張する必要があるため、日本で取得できたらOKではありません。
アメリカならアメリカ、欧州なら欧州、中国なら中国で、同じように特許出願から権利化、その後の維持までお金がかかるのです。


日本が誇る大企業ですら、全世界すべてで取得した特許はほぼありません。
権利というのは、難しく厄介なものです。

 

最後にパート1のまとめですが、特許は個人・企業・組織の(無形)財産であり、国力を上げる大切な資です。
大学は研究機関であり、原石となり得る研究が日夜行われています。
その大学の多くが、特許を持つだけで赤字、、、これは日本全体の”国力”や世界と対峙する”日本経済”の視点にたったとき、とても大きな問題のように思います。

 

日本が先進国と言われた時代は、もう過去のことですが、これからの時代を生きる私たちにとって、企業や大学が一体となって先端技術を磨き、国力を復活させることはとても重要なことではないでしょうか・・・。

 

最後に壮大なテーマにしてしまい、すみません(笑)
ということで、今日はこのへんで。
どーも、ありがとうございましたー。